「走れメロス」(4)

ふとまつ

2024年08月24日 18:02

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 作品ツッコミの続き。

 一方、結婚式も含めた自宅シーンは、シルレルではたった2行。王の元から去った次の行ではもう「そして三日目の朝〜急いで急いで妹を夫といっしょにした彼は」帰路についてしまう。

 シルレルではタイトル自体が「人質」ってなってるように友人との関係に照準をあててたけど、太宰は家族との関係のことも描いているってことになるかな。でもだったらシルレルさん、友人を名無しですませないでよ。

 太宰は、しっかり「ほんとは家にいたい」という内心を何度も出してるほどだもんね。妹に、そして妹婿に、それぞれに対して心境からくる言葉を遺言のように投げかけるほどに。

 そっから先、氾濫する川を渡るシーン、強盗を返り討ちにするシーン、そして動けなくなって清水に救われるシーン。その手順はメロスもシルレルのまま。ただ一点違いがあるとすれば、諦めの心情はシルレルにはない。

 この後、状況をそれとなく伝える二人の人の会話内容、フイロストラトスの声かけ、そのへんも基本的な線はそのまま。とはいえ「なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っている」という理由づけは、太宰オリジナルなんだね。(フィロストラトスの立場も変えている)

 結末部分でも、ドラマチックな頬を互いに殴らせるシーン、さらに少女がマントを捧げるエピソード、そのどちらも太宰オリジナル。むしろ王が「仲間」になることを望む展開はシルレルにもあったわ。

 んー、なんか展開の違いを示すだけで今回は終わってしまって、ちっともツッコミになってない。王の改心あたりが太宰オリジナルだったらツッコんでたとこなのに、原作通りだった。

 全体に友人との関係に対して、家族の意義をより強めに持たせたというのが、太宰版の特徴と言えますかね。

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24.08.24 リリース
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