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2019年04月08日

「注文の多い料理店」

 宮沢賢治が生前に唯一刊行した童話集であり、かつそこに収録された表題作ですね。作品の解釈とかテーマとか、そういう点はあまりふれず、基本的に読み語りをする上で感じていることなどを書こうと思います。

 まっつの20年近い読み語り歴の中、この童話はもっとも回数多く取り組んできた小説系作品のひとつです。これに匹敵する小説系は、芥川の「蜘蛛の糸」くらいかなあ。あ、楠山「ねずみのよめいり」もかなりか。

 まあその羅列はどうでもいいんですが、そのように回を重ねているので、当然、読み方も多少変遷してきてます。年を経て確認しようと思ったら、わ、初期というか2011年まであたり音声データは…いまはもう聞けないじゃないかっ。ああー、MD…。

 そんなわけで、きっちり振り返るのは難しいので、今、この作品についてどう感じ、どう意識しながら読むかということを披露しつつ、多少その中でかつての読みのことが思い浮かんだら示していくにとどめます。

 まずは主要登場人物である「二人の紳士」。ともに「肥って若い」ってことなので、差異を出すのに最近はだいたい、ひとりはおおざっぱ。もうひとりは少し下手に出て優位に立ちたがる。そんなイメージにしていますね。ステイタス的には前者のほうがちょっとだけ上の感じ。

 これがはまるのは、戸に書かれた指示に少しは疑念を持ちながらも、後者が思いつきでもっともらしいことを言って問題ないことにしてしまう、という流れがおおむねあるから。たぶん初期のころは、そこまで明確に意識してなかったと思うけど、だんだん、そうやって二人が追い詰められていく中に、両者の必ずしも健全ではない関係性があるのがおもしろいと思い始めたんだよね。これ、最近はけっこう鉄板な感じで採用してる。

 まあそれでほぼ進行して、もうひとつ大きなポイントは終盤の戸の中から聞こえる声ですね。これ初期は体ごと切り替えて戸の向こうの存在(明示されてないけど山猫の子分たち)になってやってたと思うんだけど、いつのころからか、体は紳士たちのままで、声だけそいつらにする、というやり方にしてるんですね。

 どういうことやらわかりませんね。そこはライヴでお楽しみくださいませ。(19.04.08)

[読み語り(ソロ)所要時間]15分-17分半(19.04.13追記)  続きを読む


Posted by ふとまつ at 11:25Comments(0)作品雑感